今日は「退職・転職は決して悪いことではない」ということを、「転石苔を生ぜず(転石苔むさず)」という諺に絡めてご紹介したいと思います。
「転石苔を生ぜず」の2つの意味
同じ諺が国や時代により違う意味で使われることは珍しくありません。
たとえば、”A rolling stone gathers no moss”。
日本語に訳すと「転石苔を生ぜず」または「転石苔むさず」となります。
言い換えると「転がり続ける石には苔がつかない」という意味なのですが、国によって解釈が違います。もっと言うと「苔」を良いものとして捉えるか悪いものとして捉えるかによって全く違う解釈になります。
1．イギリスでの解釈
イギリスでは、「一箇所に落ち着かない人は大成しない」(職業や住まいを転々と変える人は成功しない)という意味で使われます。忍耐を美徳とする文化です。
川の中で流れに任せてコロコロと転がっている石には苔はつきません。
一方で、川の流れから離れたところにどっしりと構える石は、洪水などの天変地異でもない限り動かないため、苔がつきます。そして、長い年月をかけて苔が育っていきます。
歴史や伝統を重んじ、苔を価値あるものとして捉えるイギリスらしい解釈の仕方です。
なお、日本の伝統的な捉え方でも、苔は「長く継続する」ことの象徴として好まれ、鑑賞の対象として愛されています。日本の国歌「君が代」の歌詞にも「苔のむすまで」と出てきますよね。安定を好む日本人らしい解釈とも言えます。
2．アメリカでの解釈
アメリカでは「活発に活動している人は、成功する」(絶えず動き回っているのは優秀な人間で、自分の能力を試す人には明るい前途が開けていく)という全く逆の意味で使われます。
動き回っていれば苔のような余計なものがつくことはありません。
伝統や歴史は古臭くて価値の無いものという考え方をするアメリカらしい解釈の仕方です。
「苔」をどう捉えるかによって解釈は全く異なる
苔を良いものとして捉えれば、苔を育てるために一か所に留まるべきということになります。
一方で、苔を悪いものとして捉えれば、余計な苔がつかないように積極的に動き回るべきということになります。
日本での「転石苔を生ぜず」の意味は変わりつつあるのでは？
たしかに、かつての日本では「転石苔を生ぜず」は「一箇所に落ち着かない人は大成しない」というイギリス的な意味での解釈が当てはまっていたと思います。「辛くても我慢強く耐えていれば、いつかは必ず成功する」と耐え忍ぶことが美徳とされてきました。
しかし、「一つの会社で定年まで勤め上げ、十分な退職金を受け取り、年金と合わせて、老後を生きていく」というモデルが通用したのは過去の話。団塊の世代までの話です。
今は、終身雇用制度が崩壊し、リストラのリスクがある時代です。
また、無事定年まで勤め上げたとしても、退職金制度そのものを持たない企業も増えており、年金制度についても当てにできない時代になってきました。
こうした変化を嘆いても仕方ありません。若い世代は、時代の環境の変化に合わせた生き方、行動スタイルを身に付けています。未経験の物事にチャレンジしていくことも求められています。
どちらかというと、「絶えず動き回っているのは優秀な人間で、自分の能力を試す人には明るい前途が開けていく」というアメリカ的な意味の解釈が当てはまっている気がします。
退職・転職は決して悪いことではない
日本では終身雇用制度の名残りや安定志向などから、退職・転職を「悪」と考える人もいます。
しかし、新たなスキルを身につけることが出来たり、キャリアアップを図れたり、収入が増えたり…と、転職をすることで得られるメリットも多いです。退職・転職が悪いこととは一概には言えません。
最近では、「合わない会社で働き続けるくらいなら、辞めて転職したほうがいい」と考える人も少なくありません。
労働環境によって働くことへの楽しさややりがいも変わっていきます。
現在の職場で長く働いても理想のキャリアパスを描ける可能性が薄いなら、思い切って退職・転職を検討してみましょう。あなたが輝ける環境を見つけられることを心から応援しています。
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